海の散骨 熱海市が指針 ニュースより

遺骨を粉状にして自然に戻す散骨について、熱海市は、海岸から沖合十キロまでの範囲で自粛を求める独自指針を作成した。対象は海洋散骨を手がける自然葬業者で、七月一日に運用を始める。観光地のイメージ保護や漁業者とのトラブル防止を図る狙い。海洋散骨をめぐる法的規制はなく、業者が個々の自主ルールで実施しており、地方自治体の指針作成は異例。指針は要請にとどまり、罰則はない。

熱海港の沖合約十キロには観光地の初島がある。このため指針では、業者に対して、海上散骨は、市内の海岸から十キロ以上離れて実施することとし、マリンレジャー客の多い夏場は自粛を求める。宣伝の際は「熱海沖」と記さず、遺灰は水溶性の袋に入れ、ガラスや金属を一緒にまかないことも要請する。これらの配慮を業者の責務とした。

市は、熱海の観光ブランドは温泉だけではなく、海産物や海水浴といった海の魅力に支えられていると判断。無秩序な散骨によるブランドイメージの低下を避けたい考えだ。背景には昨年、自然葬業者が熱海沖などで計画した散骨に、反対運動が起きたことがある。

海洋散骨に携わる業者によると、熱海沖は東京湾や湘南沖ほど人気は高くないが、一定の需要がある。

指針作成を受けて、二〇〇八年から熱海沖で海洋散骨を行っている神奈川県内の業者は「住民とトラブルになりかねない」と撤退方針を固めた。

船が苦手な人がいることや、思い入れのある地名が散骨の場に選ばれるため、海岸十キロ圏外や熱海沖と記さない条件に従うと、利用者の希望に沿えないという。

この業者は「多様な業者がおり、混乱を避ける上で指針は良いことだが、個人で散骨する人は増えている。業者だけ縛るより散骨そのものの指針が必要と思う」と話した。

罰則はないということですが社会的責任を持って仕事を行っている海洋散骨業者は、海洋散骨を希望される方がいる限り、遵守するか、撤退するかは当然のことだと思います。